| 肩の高さ:3m | 頭の高さ:3.2m | 新生代更新世後期(1−30万年前) |
寒帯のマンモス
↑ウーリーマンモスの最初の組立骨格はレニングラードの St. Petersburg 博物館にあり、Adams Mammoth と呼ばれている。1799年にレナ川流域で36000年ほど前の地層から発掘された。推定45歳の雄で肩高3m、大きく湾曲した牙も長さ3m。 |
古代の哺乳類ではおそらく最も有名なマンモスには何種類かあるが、単にマンモスといえば毛の長いウーリーマンモス Mammuthus primigenius を指す。ヨーロッパからアジア、そして後には北アメリカにまで分布を広げた。シベリア北部からは冷凍になった死骸が40体以上も発見されていっそう有名になった。 最も保存状態の良好なマンモスの遺体は、1907年にロシア北部・タイミル半島で発見された。雌で鼻の一部がキツネかオオカミに食べられていた他は、暗い褐色の毛で覆われた全身が残っていた。肉も脂肪も、胃の内容物まで残っていた。 これより少し前、1901年にもシベリア東部・コリマ川支流のベレゾフカ川で完全に近い保存状態の冷凍死体が見つかっている(Beresovka Mammoth)。こちらは若い雄で、肩高約2.7m。鼻はオオカミに食べられたらしく失われていた。 レニングラードの博物館に展示されているウーリーマンモスの大きな牙は長さ4.2m、根本の直径19cm、重さ83kgある(ヴェレシチャーギン、1979)。 |
|
ウーリーマンモスの最大級の標本→では高さ3.5m(肩高?)もある。しかしマンモスと呼ばれるゾウのなかには、もっと巨大な種類がいる。 マンモスの化石は北海道からも発見されている。1938年に夕張市で見つかったのが最初で、1954年にも日高山脈の氷河の痕から2−5万年前のマンモスの臼歯が見つかっている。最近ではこれらの歯はウーリーマンモスというより、松花江マンモスではないかともいわれている。 |
![]() |
松花江マンモス Mammuthus sungari
![]() |
更新世後期に中国にいた松花江マンモスは史上最大のゾウかもしれない。1980年に内蒙古で2頭の(33000年ほど前の)化石が発見された。1頭は40%弱、もう1頭は60%以上の骨が揃っていた。両方を使って復元された骨格は肩高4.7mにもなった。牙は長さ3.1m、根本の直径22cm。ウーリーマンモスの牙ほど曲がりくねってはおらず、緩やかに上方へカーブしている(bytravel)。 1985年、大阪で開かれた天王寺博で日本初登場。1994年には茨城県にミュージアムパーク自然博物館が開館し、松花江マンモスの初めてのレプリカが展示された。 茨城県自然博物館のレプリカは原標本(←)よりも脚が真っ直ぐに組み立てられており高さは5.1mあるという(Asier Larramendi 私信)。 |
|
金子隆一氏(1996)は松花江マンモスは、独立した1種かウーリーマンモスの亜種かはわからないとしながらも、内蒙古のザライノールで発見された個体は肩高5m、推定体重20tもあり、インドリコテリウム(バルキテリウム)を凌いで史上最大の陸獣であると書いておられる。 これを見た時は少々大袈裟と感じられたものだが、最近(2008年4月)Wikipedia でマンモスを編集されている Asier Larramendi さんからメールで、内蒙古産の骨格は骨盤の幅が2.5mもあるところから体重は20t以上と推定できると知らされた。一般に最大のマンモスとされるステップマンモスより1/3近くも体の幅が広いという。ちなみに巨大竜脚類のスーパーサウルスの骨盤の幅が2mなのだが。 マンモスは前脚が長く、その分肩が高くなり、体の後部にかけて低くなっている。胴体は現在のインドゾウよりも相対的に短めなので背の高さがそのまま体重に反映するわけではない。肩高4.5m(頭頂までの高さ4.9m)のステップマンモスは、体重18tと推定されたが、その後11tに下方修正されている(DeCamp, 1965)。 |
↑1973年に発見された21000年前の松花江マンモス(黒龍江省博物館)。中国で出土したマンモスとしては最も完全な骨格で肩高3.3m、長さ5.5m、牙は2m。推定13−14歳の雄。これはウーリーマンモスであるともいわれるが。 |
|
温帯のマンモス ウーリーマンモスは体型は現在のインドゾウに似ている。しかし一説によるとすでに新生代鮮新世(500万年前)にマンモスの祖先と今のゾウの祖先は分岐したという。化石のゾウで最も血筋が近いのは、更新世中期(30−60万年前)のヨーロッパにいたステップマンモス Mammuthus trogontherii である。ウーリーマンモスの直系の祖先と見られるが、はるかに巨大でドイツのモスバッハで見つかった骨格(断片)は肩高4.5mと推定されている。![]() |
↑ Steinheim で発見された Fraas's Mammoth の完全な骨格が Stuttgart 博物館に展示されている。ドイツの Fraas's Mammoth Mammuthus fraasi は肩高4.3mもあったという(Silverberg, 1972)。年代的にはステップマンモスとウーリーマンモスの中間に当たり(30−37万年前)、学者の見解もステップマンモスに近いともウーリーマンモスの亜種であろうともいわれる。 |
|
↑ 1996年9月、セルビアの Kikinda で巨大なステップマンモスのほぼ完全な化石が見つかった。骨は90%以上も揃っていた。肩高4.7m、長さ7mもあり推定体重は7t? 牙は3.5mあった。しかもこれは骨盤の形からして雌だという。年齢は64歳と推定されている。さらには脊椎炎やリュウマチを患っていたこともわかった。 このゾウは沼に足を取られて倒れ、老齢と病のために起きあがれずそのまま死んだと見られる。骨にはハイエナの噛み跡も残っていた(Kika OnLine)。 ※ Kika の存在は Asier Larramendi さんから知らせていただきました。↓ |
1970年2月、種名が確定していない(50万年前の)ゾウの骨格がロシア・アゾフの博物館に展示され、それは肩高4.8mもあると伝えられた(Gerald L. Wood, 1972)。これはステップマンモスだったかもしれない。というのも1964年にアゾフ海東岸で更新世中期の地層から非常に大きなステップマンモスの化石が見つかっているからだ。頭骨は長さ144cmもあり、骨盤や腸骨の測定から肩高4.5mと推定されている。 また1999年には同じ地域から雌の化石も見つかりこれは頭骨の長さ115cmだがそれでも肩高は4m近くあっただろうという(V. S. Bajgusheva, 2001)。 |
暖帯のマンモス ![]() |
Great Southern Elephant ステップマンモスをさらにさかのぼると更新世前期(60−300万年前)に南ヨーロッパにいた南方マンモス Mammuthus(Archidiscodon)meridionalis がその祖先と考えられている。これは涼しい気候に適応した最初のゾウといわれるが、体毛はまだ薄かっただろう。インドゾウによく似た体型で背中は僅かにアーチを描いており、また体はいっそう大きく肩高3.6m、体長4.2mに達した(鹿間、1979)。ギリシャのマケドニア博物館には、南方マンモスとしては最古の−300万年前の化石がある。1977年に発見されたほぼ完全な骨格だが当時の人類によって狩られ、解体されたようでバラバラになっており、牙は失われていた。高さ4m、長さ5mくらいあっただろうと推定されている。 おそらく160−180万年前に南方マンモスはシベリア経由で北アメリカに到達した。カリフォルニアのサンタバーバラ自然史博物館には2005年4月に発掘されたかなり完全な南方マンモスの骨格がある(肩高3.7m、牙の長さ2.4m)。 |
↑パリ自然史博物館に展示されている南方マンモスの骨格。肩高385cm。※ Wikipedia の Asier Larramendi さんから知らせていただきました。 |
↑イタリアのアブルッツォ国立博物館には1954年に発見された南方マンモス(亜種 M. M. Vestinus )の完全に近い骨格がある。150万年ほど前のもので、肩高3.9m、頭頂までの高さ4.5m、牙から尾までの長さ6.5mもある。 |
ヨーロッパでは3世代のマンモス(meridionalis、trogontherii、primigenius)
がオーバーラップしていたことがあるとの発表がなされた(2001年)。イギリスの Buckinghamshire や Norfolk で見つかった化石から、一時期に2種のマンモスが共存していたというのだ。
ロシアの Andrei Sher とイギリスの Adrian Lister によれば、イギリスの Norfolk で見つかった化石から、100万年前には南下したステップマンモスがそこで南方マンモスと出会った。そして Buckinghamshire での発見から、19万年前にはウーリーマンモスとステップマンモスの出会いがあったと。いずれの場合も気候の変動(温暖化)に伴って北方種が南下し、古いタイプを追放したとしている。ただその間に限定的ながら2種の交わりもあっただろうという(BBC)。